前編

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 これ、はたから見たら警察沙汰だよね。下半身丸出しの素っ裸男が、女子高生を組み敷いてるんだから。  大声出したら先生たちが気づいて、助けに来てくれるかも。そんな事を思っていると、男は全てを知っているかのようにふっと気障っぽく笑った。 「ああ、この場所だけ、今は時が止まっているからね。狭間(はざま)の空間とでも言うのかな。だから誰も来ないから安心しなさい」 「いやいやいや! そういうの心配してるわけじゃないから!」  急に大声をあげた私に、ブルータスは目をまん丸くして驚いた。 「君はなかなか気が強い。うむ。私の好みだ」 「いやいやいや! そういうの必要ないから!」  噛み付くように私が叫ぶと、ブルータスはブルーアイを細めて私をじっくりと見やり、いきなり顔を近づけてくる。  そのままひげの奥の熱い唇が私の唇を奪い、気がつけばあっという間に舌が絡め取られていた。 「ふむぅ……っ」  こ、これディープキス?  私、キスだって初めてなのに、初めてがディープキスで、しかも石膏男なんて……。  ショックで固まっているというのに、ブルータスの舌は容赦なく私の腔内を味わい、舌の根元に分厚いベーコンのような舌を巻きつけてくる。  人間の舌ってこんなに長いの? それともこの男が普通じゃないの? 恐らく後者だとは思うけど……。
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