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だからこそ、ブルータスの気持ちをちゃんと知りたかった。
ぐるぐると思い悩んで顔を歪めた私の頭に、ブルータスはその大きすぎる手をのせて優しく撫でる。それはとても愛情のこもった行為だった。
「カナの夢を叶えることが、私の夢だ」
ブルータスの声が、あんまり決意に満ちていたので、私は思わず聞き返してしまう。
「……え?」
「カナと共に生きることだけが、私の幸せなのだ」
頭にのせられていたブルータスの手が降りてきて、私の頬を撫で、包み込む。吸い込まれるような青い瞳が情熱的にこちらを見ていた。
「カナが過ごした、昨日から今までの間に、私は生まれ直してやり直してきたんだよ。こんな事を言ったら頭がおかしいと思うだろうが、本当にそうなのだ。
カナにとっては昨日になるのかもしれんが、あの学校でカナと出会った後、時を遡り、生まれ直す所から私はやり直してきた。今の私は正真正銘、ブルータスという三十五歳のイギリス人だ。お前と出会う為に、芸術を学び、日本を学び、日本語を学び、留学して、事業を興し、今ここにいる。
ちゃんとお前に出会えるのか本当に不安だったが、今こうやってカナと名を呼ぶことができて、私がどれだけ喜びに満ちているか、カナには分からんかもしれないな」
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