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ブルータスの瞳をじっと見つめながら、私は頭を懸命に動かしてなんとか理解しようと頑張った。とにかく、今ここにいるブルータスは、『この時代』のブルータスだっていうこと? 自分で言ってもちょっと頭がついていかない。
まだまだ色々なことが頭の中でこんがらがっていて、全て理解し切るにはかなり時間がかかりそうだった。
「カナと出会うまでの私は、石像として、数えるのも馬鹿馬鹿しくなるような遥かな時間を過ごしてきた。幸いだったことは、その遥かな時間の末カナと出会った記憶、そして私という人生を生まれ直して今に至るまでの記憶、それら記憶の全てを余さずにもっているということだ。だからこそ、私はカナを目指して生きてこれたし、これからもカナのために生きていくことができる」
……な、なんて重たい愛なの。ここでブルータスを拒絶してしまったら、ブルータスの生きてきた恐ろしいほどの歴史は一体どうなってしまうんだろうか。まあ、そんな意地悪なことはしないけれど。
正直私はドン引きしていた。聞けば聞くほど、ブルータスの私に対する異常な執着心は凄かったから。私に対するあり得ないくらい大きな愛情、そして、完全に絡めとられてしまった自分自身に肩をすくめるしかない。
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