復讐するは我に・・・?

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 が、その喉に食い込んでいるのは、紐でもなければ太いロープのたぐいでもなかった。  青年の『右手』が、猛禽類の爪のように喉を握っていた。そうして、それを何とか引きはがそうとでもしたかのように、『左手』がむなしく添えられているのであった。 「・・・文章通りに解釈すれば、このホトケさんは、そのう。こきつかわれ、ついにキレた自分の『右手』に殺されたーーそういうことになるんですかねえ」 「動機は長年の過重労働に対する怨恨。加えて、『優遇されていた左手に対する、異常な嫉妬』ってか。そんな報告書を出してみろ。俺たちの方が、お医者に送られるぞ! 送られるかどうかーー賭けでもするか?」 「よしますよ。でもねえ・・・仮に、ホトケさんに何らかの異常性があったとして。自分で自分を絞殺なんて、できるもんでしょうかねえ」  たずねられた刑事は、苦笑いを浮かべる。 「知らん。まあ、数日もしたら、ネットだのTVだのが、微に入り細をうがって教えてくれるだろうさ。どこから連れてくるのか知らないが、『何とかに詳しいナントカ先生』だの『専門家』だのを、ひな壇に並べてな。そしてーー半月もツツきまわしたあげく、そんなことはなかったみたいな状態になる。こっちも賭けてもイイぜ」 「そうかもしれませんが・・・」  もう一人の刑事が、まるでそこに何者かがいるみたいに虚空を見上げる。 「もしもーー自分の体の一部が。本当に『反乱』の可能性を秘めているとしたら、どうでしょうね。AIの反乱どころじゃあないですよね。ある日、突然、あっちでもこっちでも本人の意志に関係なく『自死』が頻発するなんてことになったら・・・」 「想像力旺盛だな。ああ、自分の体は大事にしてーー何事も公平に扱わなくっちゃ、な。不公平はいけないよな。ああ、このPCに書いてる通り、まったくいけないって。嫉妬は女の専売特許じゃないからなあ。  おっと! 最近は、こういう言い方もアウツだったよな。まあ、なんだ? ナニをするにも、たまには『左』でってか? くっくっく・・・」  
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