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とある女流作家の遺品
亜久津礼子は、かなり気位の高い高圧的な女性であったらしい。
学生時代は美貌が自慢で、成績もよかった。
だがその性格故なのか、就職活動で失敗。企業に勤めて誰かの下で働くということに不向きだった。
だがその後にドラマの脚本家としてデビュー。「昼ドラ=ドロドロ」というイメージを作った人物らしい。
その後十数年はそうした脚本や小説で売れっ子になったが、時代は徐々にハートフル路線や純愛、青春系などと多様化していき、人間の醜さを曝け出すものは表舞台からは消えていった。
結果、もてはやされていた礼子はいつの間にか消えていき、死亡のニュースなどはとても小さくあるのみだった。
「随分と、寂しい人生だったな」
調べた三間はぽつりと呟く。
結婚もしていなかった礼子は、亡くなる頃には天涯孤独となり、遺品の引き取り手もなかった。菩提寺を訪ねると、寺の住職が段ボールを二つ程持ってきてくれた。
「こちらが、亜久津礼子さんの遺品です」
「これは、どうして?」
「作家をしていた時のアシスタントだったという男性が、こちらに預けていったのですよ。なんでも、供養して欲しいと」
「供養、ねぇ」
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