とある女流作家の遺品

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 天涯孤独に亡くなった元上司の死を悼んでそんな事を願い出たのか。だが、供養というなら墓だけでも十分だろう。永代供養のこの寺なら、十分供養だってされるはずだ。  段ボールの中を開けて見る。  ペンや原稿用紙が多いが、しっかりと綴られている。几帳面な感じがする。  そうして見ていると、スクラップブックが数冊出てきた。それを手に取ってみる。  一冊目はなんてことはない。派手な格好をした女性と、他に数人の男女が写真に収まっている。中にはホストクラブのような場所で若い男をはべらせているものもあった。  派手好きで、見栄っ張りだったのが良く分かった。 「三間さん、この男性って昨日の…」 「ん?」  横合いから見ていた部下が、不意に指を指した。それを見て、三間はガバリと身を乗り出す。  ホストらしい男と映り込んでいた礼子の写真。その男は昨日無残な姿を写真に残していた男と同一人物だ。  慌てて他の写真も見てみる。そしてその中のいくつかから、昨日の写真に収められた被害者とおぼしき人物と映る礼子がいたのだ。 「礼子と被害者の関係を洗うぞ」  段ボールを住職から借り受けた三間は、そのまま署へと戻っていった。
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