京子の場合

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京子の場合

 私は千尋さんが羨ましい。  お兄ちゃんと血が繋がっていないのだから。  お兄ちゃんは私の事をいつも守ってくれている。  それは今でもだ。  ちょっと過保護が過ぎる場合があるが、子供の頃からお兄ちゃんは私やお母さんをずっと守ってくれていた。  相手が誰であれ…学校の同級生だろうが、先輩だろうが、先生だろうが、お父さんからさえ我が身を犠牲にして戦ってきてくれた。  そんなお兄ちゃんに、今好きな人が出来た。  お兄ちゃんと同じ店で働く白石千尋さんだ。  千尋さん自体は、凄く良い人だ。  可愛いし、綺麗だし、おしとやかだし、スタイルも良いし、優しいし、私が持っていない物を沢山持っている。  お兄ちゃんも千尋さんと接する時は、鼻の下を伸ばしてだらしない…  あからさまに私の時とは態度を変える。  私はお兄ちゃんに愛されているが、それはあくまでも妹としてだ。  頬っぺにチューをされたり、抱きしめられたりしても、それは人が自分が愛するペットにする行為と何も変わらない。  だから、千尋さんに嫉妬してしまう。  お兄ちゃんのだらしない顔を見る度に、釈然としない気持ちが沸き上がる。
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