† いずれ風化し命は散り。

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  「────嫌だ! 僕はやらない! そうだよ! あいつにやらせれば良いんだ!」 「彼女は苦しむかもしれないよ?」 「知らないよ! あんなヤツ────  どうだって良い!!」  少年と博士の会話に少女は愕然とする。  どうだって良いのは、痛みや苦しい実験じゃなくて、  私……?  少女は一気に崩れ落ちる。足下から落下する。  それは気分だけで、実際にそうなった訳では無いけど。  少女の中にはたくさん少年との思い出が在った。少女の中には、少年の居場所が在ったのだ。  でも。  少年は吐き捨てた。少女をどうでも良いと。  少女に「大丈夫」だと言ってくれた、悪夢は消えるからと笑ってくれた、その口と顔で。  少年は、少女を棄てた。  少年の中に少女の居場所は無かったんじゃないか。そう感じた。  だから。  だから、少女は居場所を作った。少年に感染し夢を見せ、覚めない眠りの中少年の脳内に寄生した。  けれど、どの少年も、駄目だった。  夢を見ている間は皆自分を許容するけれど、それだけで。  すぐ楽になろうとするかのように息絶えた。そこに、少女に対する何らかの感情は、無かった。  夢の穏やかさに身を委ねて、少女自身を気に掛けず……あの少年のように、少年たちは皆息を引き取った。  何度も何度も感染した寄生した。そのたびにウイルスは強大になり形を変え潜伏期間も長くなったりしながら。  少女は緩やかに少年たちを籠絡する方法を手に入れた。ゆっくり、刻み付けるように染み込むように。その記憶に夢の中に。  だとしても、同じだったけれど。  少女は夢の住人で、脳に住んで現実と幻想の曖昧な境に記憶をいじれても、  誰も少女をその内にとどめてくれなかった。刻み込んでは、くれていなかった。  長い永い時間の経過に少女は当初憤りを感じ手当たり次第に死へ誘ってきたけれど。  更なる経過に虚しくなって、あきらめた。どうでも良くなった。  ああ、これが慣れかな、と、気怠げな少女にも関係無く次から次へと感染して行くウイルスに、仕方なく流れ作業が如く己の役目をこなしながら考えた。  ぼんやりと。死んでしまっているくせにおかしな話だが、器用にそんな感覚を伴って思った。  きっともう変わらないのだろう。自分は、最後までこのまま無くされて逝くんだと。  
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