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なので。
「はい」
素直に報告することにする。
「彼女は今、
僕の中にいます」
白い部屋。実験室の一部を模した夢の世界。
彼女は言った。
「私は、今やいろんな人に感染してるわ。何回も何回も分裂して蔓延して幾度も幾度も遷って来た。私は一人で、けど群衆なの」
私は今も他の人と対話してる。彼女はそう告白した。
「どうやって繋がってるの、その、」
たくさんの、きみと。
僕が問うと彼女は少し笑って説いてくれた。
「無意識下はね、みんな繋がってるの。人間は確かに表面は[個]で在るけれど、ずっとずっと奥の意識から離れた命と記憶の根本的な部分は平面なのよ。みんな繋がってるの。……昔博士が言ったときは私もわからなかったけど」
今なら理解出来ると、彼女は苦笑した。
「じゃあ、その無意識下を伝って?」
「ええ、そうよ。脳の使われていない大体部に、無意識は存在するの」
太古の心理学みたいな哲学みたいな、はたまた神話や空想上の話みたいに思う。けれども彼女と言う存在を前にして、その愚考は愚かだろうか。
「じゃあ、どうにかその無意識下を使ってきみを一つには出来ないの?」
僕の質問に彼女は首を傾げ俯くと、一瞬だけ黙考し答えた。
「出来ると思うわ」
でもね。接続詞が用意される。
「回収は出来ないの。なぜならすでにすべて『私』で、一つの存在だから」
要するに、全員を納得させても実質的には皆それぞれの無意識下にとどまると言うことか。
「……ややこしいなぁ」
「そうね」
ぼやく僕に彼女が同意。何と閑かなことか。
現状はそんなに呑気ではないかもしれない。
「ええと、つまり、きみと言うサーバに僕や他の感染者がアクセスしてる……みたいな感じ」
「ああ……それがわかり易いかも」
成程ね。そう考えればすんなりと内容が把握出来る。
「じゃあ、え、と、……どうなるんだろう、結局」
不出来な頭をフル回転したがさっぱりわからない。僕が正直に尋ねると、彼女はくすくす笑って回答してくれた。
「簡単よ
私はあなたの内で、他の誰かの中で、
息を潜めるだけだから─────」
「……それでいなくなったの? や、違うわね。出て来なくなったの?」
「えーと、他はわかりませんけど、僕にはたまに出て来るんじゃないかな? 夢の中に」
僕は彼女に“僕の中にいれば良い”と提案した。
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