† それは、悪い夢。

7/8
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 少女が『少年』を捜すのは。  少女はいろんな少年に寄り添って来た。  そのたびに今度こそはと────思って落胆。  どの少年も『少年』ではなかった。誰も少女の捜し人にはなれなかった。  だけど、と少女は思う。  少女はどうしたいのだろう。どうなりたいのだろう。判断出来なかった。  少女は博士に兵士に施設の人間に、……それと少年に、殺された。  けれどならどうしたいのだろう。復讐、だろうか。  違う気がする。だったら何だろうか。  やさしくされたい? 昔みたいに。  悪い夢に目を覚ます自分を慰めてほしい? ……まさか。  今や少女自身が悪夢だと言うのに。  空白のひととき、少女は思う。 “私は何がしたいんだろう……”  そう少女が考えたとき、誰かが少女の手を掴んだ。 「……で、どうなるんだよ」 「え?」 「え、じゃなくて。どうするんだ? そんなホラーみたいな話、どうやって対処するんだよ。まさかお祈りでもするってか?」 「エクソシストを呼ぶとかですか? それは無理なんじゃ……」 「そうねぇ……」 「何だよ。何も考えてないのかよ」 「だってわかんないもの。そんな言うならあんたが罹ってよ」 「阿呆抜かせ。俺はとっくに少年期を終えてんだ。無理無理無理」 「そこなのよねー。発症者はみんな少年だから。……生存者も未だ無いし」 「心は少年、とか言ってましたよね?」 「心はな」 「馬鹿馬鹿しい。そんなの何の役にも、」 「────こちら救護班! 被験体『B-0ur0bor03』が─────」 「……どうして……?」  目を覚ました僕に、彼女が驚いた顔をした。僕はきょとんと首を傾げる。 「……。何が?」 「だってあなたは……!」  彼女は泣きそうな顔になった。僕は困る。 「ちょ、ど、どうしたのっ? 僕何か気に障ることした?」  焦って吃りながら僕は何とかかんとか彼女に問い掛ける。彼女は頻りに首を振り「違うの違うの」と繰り言を口にする。  僕は悩む。こんな彼女は初めてだ。 「違うの……どうして?」 「だから、何が?」 「どうして起きたの?」  恐る恐るそれだけ言って、彼女は唇を噛んだ。あと少ししたら泣いてしまいそうだ。  僕は眉を下げたのを自分で感じ精一杯脳みそをフル回転した。彼女を泣かせたくなくて。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!