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不完全な初恋
【初恋は実らない、この俺でさえ実ってないんだから――】
これは、高校からの親友、高岡颯人の名言だ。
俺が初めて恋をしたのは、人よりもかなり遅い高校1年生の頃。
好きになった時からすでに失恋が決まっていたという不毛な恋だった。
高岡の言う通り、もう彼女との恋は実らないものだと、どこかで諦めていた。
だが、奇跡は起こった。
社会人になり、2年が経過したある日。
「人事から新入社員のリスト回ってきたぞ」
部長が言うや否や、男性社員が部長の席に群がった。
「今度こそ女子社員配属されます?」
この部署のムードメーカーのひとりである北村さんがいの一番に部長へ質問した。
「あんまりがっつくなよ。ちゃんと1人配属されるから」
そう言って部長はファイルを北村さんへ渡した。
「どれどれ……」
「おい、北村。俺にも見せろ」
北村さんのパートナー的存在の鈴木さんもファイルを覗き込む。
この部署は男性社員のみの6人で構成されている。
数ヶ月前まで所属していた女子社員は、多分俺のせいで退職した。
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