第三章 別れのきっかけ

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長い長い小杉さんとのキスの終止符は私の涙だった。唇を重ね合ううちに気付けば私は涙を流していたのだ。それに気付いた小杉さんから唇を離し「ごめん、夢中になりすぎた。」と頬をつたう涙を指で拭い両瞼にキスを落とした。「ごめんなさい・・・」その一言がやっと出た言葉で、続けようとすると強く抱きしめ、それから壊れ物を扱うように優しく抱きしめてくれた。私は抱きしめかえすことが出来ずにいた。とうとう主人を徹底的に裏切ってしまった。まさか小杉さんと本気のキスをするなんて。吹っ切ろうとした矢先に、こんなことになるなんて。自分が嫌で仕方ない。理性を保てなくなった。小杉さんが好きで好きで、おかしくなりそうだ。だからと言って主人と別れる気は無い自分が本当に嫌だ。自分から小杉さんに別れを告げなければならないのに言葉が出て来なかった。「君を好きでいる事で困らせてしまうのは告白する前からわかっていたのに自分の気持ちを抑えられず申し訳ない。大人げないのも分かっているけれど、どうしても止められなかった。なんでだろうか。君が御主人とモーニングサービスを予約してくれた時、君と離れる日が近づいていると直感したんだ。そうしたら今日、逢って話してキスしたいと、離したくないと抑えきれなくなったんだ、ゴメン。」耳元で悲しそうに苦しげに、ゆっくりと気持ちを伝えてくれた。直感、当たっていて嬉しい様な悲しい様な複雑な気分だ。何と言っていいか悩んでいると、また強く抱きしめられた。「小杉・・・さん・・・」名前を言うのがやっと。抱きしめられながら戸惑いまた涙が溢れた。泣いても解決にはならない。だけど堪えきれず涙が流れ続けた。
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