第二章 メル友、はじめました

19/24

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「私も小杉さんに逢いたいです、今すぐにでも。」本音をメールしてしまった。‘声が聴きたい’ではなく‘逢いたい‘。だけど実行すると後には戻れなくなる。それもわかっている。だからこそ電話もしなかったのだから。じゃあ「お茶でもしましょうか?」なんて気軽なことは言えない立場なのだ、お互いに。お蕎麦屋さんで逢うのは自制心が働いているしお互い理性が保たれている。 本当はプライベートで逢いたい。けれど自制心も理性もなくなった時とても怖い。感情の赴くままに行動していいのか?今の私たちの関係はただのメル友、顔を合わせないからこそ、ちょっと恥ずかしいことや 本音を メールで言い合えてる。心を通わせた時点で、もうそれは不倫であって、これ以上の関係は難しいとずっと想っていた。身体を通わせたら一体どうなってしまうのか? たぶん、いや・・・もう絶対に後戻りはできないだろう。そうした心の葛藤が自分を守ってきたのだ。ただ好きだという感情がもしかしたら溢れ出してきて爆発寸前で思考回路がおかしくなってるのかもしれない。これが夢ならいいのに私の夢の中には小杉さんはいつも出てこない、夢の中ですら逢えない。夢の中ですら声も聴けない。淋しくて苦しくて、胸が張り裂けそうで、こんな出逢いなければよかったと毎日を想うようになった。だって絶対に幸せになんかなれないもの。このままじゃお互いに、誰も幸せになれない。小杉さんから返信が届いた。「メールの返信を見てお互い同じ想いでいることは、とても嬉しかった。だけどきっと君は今とても悩んでいるだろうし、君を悩ませていると想うと僕も悩む。好きな人を悩ませるために僕がいるんではなくて。本当にそう想っている。君の今の生活を奪い取ることが本当に幸せなのか。何と言っていいか・・・逢いたいと言う、君が欲しいと言う、甘えたいと想う事は罪なんだと自覚はしている。だけど一度解放したこの気持ちは封印することが難しくて。君を困らせるようなことを言ってしまった、ごめん。君のことが好きで好きで 毎日声が聴きたくて毎日、君と逢っていたくて溢れ出た想いが君を困らせることはわかっていたのに。ごめん。 ・・・・・・・またのお越しを心よりお待ち申し上げております。今度は ご主人と二人でいらしてください 。そうすれば僕は理性を保っていられます」
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加