第三章 別れのきっかけ

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「お手洗いに行ってくるね」「おー。 ちょっと会社から連絡が入ったから車で仕事するんで15分ぐらいかかるわ。ゆっくりな!」 「はーい」食事をし終わって お手洗いに行くことにした私は席を立ってトイレへ向かった。 会社から連絡があったというのだから15分とはいうものの、 結構時間がかかるのかもしれない。 この店来るのも最後だから内心ホッとした。少しでもお店の雰囲気を堪能できるように、それから小杉さんの姿を見れるから。 トイレへ向かう途中スタッフルームの前を通る。 そこから小杉さんが出てきた。 目が合って小杉さんは私にニコッと微笑む、それから「こちらへ」と 私の手を引きスタッフルームと、誘う(いざなう)。「え?」と 疑問と返事をするまもなく 私の手を引きスタッフルームへ入った。カチャ、と鍵を閉める音。「大丈夫、誰も来ません。」そう言った瞬間強く私を抱きしめた。「小杉・・・さん?」「君を抱きしめることは、きっとこれが最後なんだろうと想って。最後ぐらい甘えさせてください」「・・・」 小杉さんにしてはちょっと強引。「ゴメン、余裕無い。」暫く強く抱きしめられ、私も自然と抱きしめ返していた。「小杉・・・さん・・・」「うん?」「何で、最後だって・・・?」「直感は当たる方なんだ。野生の勘(笑)」「小杉さんと野生ってギャップがありすぎて(笑)」「俺も男だから、愛してる人の小さな表情一つが心を奮わせるんだよ。 君のどんなことも見逃したくない。 直感というより 愛の深さゆえかな。」気障なことを言っているのに小杉さんが言うと説得力がある。「ありがとうございます・・・」「前にも言ったけれど、君が困ることを言っていい?」「なんでしょうか?」「 俺はどんなことがあってもこの先もずっと君を愛してるから」 別れる時間が目の前にあるのにそんなことを言われて私が困ることも分かってる。「最後まで良い人でいれたらよかったけれど君の事となると駄目だな、俺。 この手を手放したくない。君を手放したくない。ずっと一緒にいてほしい。愛してるんだ 誰よりもずっと」「・・・」 言葉にならない、嬉しいけど悲しい、返事ができない。
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