第四章(最終章) サヨナラと。

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第四章(最終章) サヨナラと。

「 もしもし・・・こんにちは」 電話の向こうではどんな表情をしているんだろう? お互い最初で最後の電話、嬉しいけど悲しい・・・同じ気持ちだろうか?「 お電話ありがとうございます。君の声を電話で聴けることはとても嬉しいけれど、その反面これが最後だと想うと複雑な気持ちです」 やっぱり同じ気持ちだった。それがまた嬉しかったけれど涙があふれた。「・・・はい」 言葉が出てこない返事をするだけ。「 最初で最後ぐらい長電話でもしましょうか★電話をしない君の声を最初で最後、たくさん聴きたいから。 充電は平気ですか?」「 はい、平気です。」わざわざ電話で話さなくてもいいような たわいないことを話し、甘くて色っぽくて優しい小杉さんの声を耳元で聴いて頭に焼き付けた。 しばらくして主人の転勤で一緒に行くことを伝えた。「いつ、なんですか?引っ越し」「明日です」「・・・もう、逢えないと想うと、気が狂いそうなほど切ないです。 だけどお互いのためになる。ご主人の転勤は、気持ちの整理も出来る機会。ある意味・・・吉報だったのかもしれません」「・・・」 そうですねー、なんて言えなくて電話なのに返事もできなかった。「 人身事故にあった昔の想い出」小杉さんが口を開いた。「人身事故?」 いきなり何を言ってるんだろう?と疑問に想うと小杉さんは続けた。「 君と僕の思い出は 人身事故みたいなもので想いかけず事故にあった、そう想った方がいいかもしれません」「事故だなんて・・・」「 それもまたいいんじゃないですか浮気や不倫を闇として心に抱えて、ご主人とこれからも過ごすのは辛いですよ?人身事故だと想ってください」 慰めてくれるてるのは分かるけれど人身事故だって片付けられるんだろうか?「でも・・・」「キスをしたのも、ぶつかっただけ、だから気にしない、くらいの方が良いに決まってます。友達以上恋人未満なんですから。ね?名案でしょう? ここは笑うところですよ」 誰よりもそんなふうに想ってないからこそ言ったんだ、本当に最後まで優しいんだな小杉さんは。
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