第6章 神様なんて存在しない

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眞名実は表情を硬くして俺から返されたハンカチを両手でぎゅっ、ときつく握りしめた。しばらくそのまま黙り込み、やがて感情が死んだような諦め混じりの声がぼそぼそと応答する。 「それなんだけど。…もう、無理。言ったでしょ、さっき。一度も脅されてないの。二度目に誘われた時も…。全然強制はされなかった。なのに、わたし。行ったの。…だから」 俺は愕然とした。 「…なんで?嫌じゃなかったの。すごい怖い思いしたんじゃないのか?」 眞名実はやや悲しげに俯き、目を閉じて首を力なく横に振った。呟くように答える。 「わからない。…自分でも」 初めて連中に部屋に連れ込まれた日。終わった後、奴らはどういうわけか打って変わって親切になった。三人がかりで眞名実の身体を洗い、丁寧に拭いて服を着せ、ゆっくりと休ませた。水分補給を気にして、何か食べるように勧められたけどさすがに何も喉を通りそうもなかった眞名実は断った。今晩はこのまま泊まっていく?と訊かれたけど当然そんな気になれない。早く安全な自分の家に帰って一人になりたかったからその旨伝えると、連中はやっぱり三人連れ立って眞名実を家まで送っていった。上林の部屋から眞名実の家は徒歩圏内だったから、何でもない雑談をしながら皆楽しげにそぞろ歩いていた。 俺はつい顔をしかめた。     
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