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第5章 ダブルスタンダード解消へ一歩
あれ以来なんとも張り合いのない、気の抜けたような毎日を俺は過ごしていた。
そうは言っても見た目上は特になんの変化もない。相変わらず自転車を漕いで駅に向かい、大学に通って研究三昧の日々だ。だけど夜、暗いがらんとしたおんぼろの自宅に向かう時の虚しさって言ったら。
以前みたいに裏口の灯りが点いてて、中に入るとふわと温かい、美味しそうな匂いが漂ってくることなんか望むべくもない。時折のそういうサプライズが生活に張りをもたらしてたんだな、ってことは改めて実感する羽目になった。
期待値ゼロってことがこんなにもやる気を失わせるとは。俺は次第に家に帰るより大学に泊まり込むことが多くなっていった。誰かが待ってる可能性のない真っ暗な家にわざわざ帰ったってしょうがない。眞名実が冷凍庫に入れておいてくれた作り置きの料理も既に底をついたし。
「なんだ、鬱陶しい面してんな。彼女に振られた?それでそんなしょぼくれて肩落としてんの?」
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