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「さて、凛さん今週はいいことありましたか?」
手元ではコーヒーを入れる作業をしながら、こちらの様子を窺いつつ尋ねてきた。
私のコーヒーはいつも、マスターが私のその日様子を見て一番合うコーヒーをセレクトしてくれるのだ。
「体育で走ってる姿がとてもかっこよかった!」
「うん」
「はい」
「今日、消しゴム落としたとき拾ってくれて、ありがとうって声かけれたの!そしたら『別に』だって!」
嬉々として語るが、山本さんは呆れて机に突っ伏し、マスターはニコニコと笑みを浮かべているだけであった。
「ねえ、凛ちゃん!? こんなおじさんが言うのもなんだけど、進展してないよね、全く。今どきの子ってこんなに奥手だったっけ?」
「人それぞれですから、焦らせても意味がないでしょう」
マスターははあとため息を吐く。
「本当にそれでいいのかね~」
「それは僕に対しての言葉ですか?」
「いいや、なんでもございませんよ」
冷たい視線を送られ、怖い怖いと言いながらコーヒーを口に含んでいた。
「でも、凛ちゃんの想い人ってのは大分周りから怖がられてるんだっけ? なんでその子のこと好きになったの?」
「軽々とそんな質問を凛さんにしないでください」
キッと睨みつけるが山本さんは今度は全く気にしていない。
「マスターに聞いてませーん、いいじゃん俺はそこだけ知らないんだよね。凛ちゃんがその『黒城』って男にベタ惚れしてるけど進展してないってことしか知らないからさ」
「それはですね!」
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