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「さすがに落ちそうだから少しそっちに寄っていい?」
「あ、はい。どうぞ」
高瀬さんがわたしの背中に近付く。僅かに足と足が触れ合って、それだけで身体全体が震えた。
「冷たくて気持ち良いね、市川の足」
「冷え性なんです」
それ以上なにも話さず、互いの呼吸だけが暗闇の中で聞こえる。
暫くしても一向に眠気は訪れない。好奇心に負けて、高瀬さんのほうを向いた。
まるで彫刻のように端整な顔が瞼を閉じている。月明かりの中で見ると、なんだか神秘的だ。
「寝てないからな」
その言葉と共に、そっと瞳が開かれる。視線が交わった途端に急激に愛しさが込み上げた。
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