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堪らず、そっと手を伸ばす。
怖がって震えているはずの心臓はアルコールで誤魔化されている。
どうか拒絶しないでと心の中で祈りながら、そのまま高瀬さんの頬に触れた。
「眠れない?」
身体の芯まで響く優しい声。わたしの脳味噌をグズグズに溶かしてしまう穏やかな表情。肌に馴染んでしまう体温。
全てが愛おしい。
この生活を守るために、今度こそ平穏な暮らしを続けるために、高瀬さんを好きだと思ってはいけない。
そう頭では分かっているのに止められない。
この優しい瞳に見つめられるたびに、この優しい声で笑いかけられるたびに、気持ちが加速していく。欲張りになっていく。
ずっと一緒にいられたら良いのに。
愛しくて切なくて、涙がわたしの瞳に膜を張った。
「どうした?」
困らせたくないのに、何も答えることができない。
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