不動産屋の不手際

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 「ど、どういうことですか?」  驚きと戸惑いのあまり素っ頓狂な声で聞き返した。  「誠に申し訳ございません!全てはこちらの不手際です……」  わたしより少し年上だろうか。  若い女性社員が今にも泣き出しそうな顔で、何度も頭を下げている。  隣の男性社員は恐らくこの店舗で一番上の役職だろう。  焦りのあまり額には脂汗が浮かんでいるのが見て取れる。  「部屋が空いてないって……。わたし契約しましたよね……」  「申し訳ございません!201号室には先に住んでいるお客様がおりまして、空きが出たのは正しくは202号室だったんです……」  「じゃあ、202号室は空いてるんですよね?」  「いえ……。誠に申し訳ございません……。202号室は既に本契約を済ませたお客様がおりまして、こちらの物件にはもう空き部屋がなく……」  あまりのショックで気が遠のき、それ以降の説明は全く耳に入ってこなかった。
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