鬼胎を抱く日々

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 高瀬さんがシャワーを浴びているらしい水音が遠くのほうで微かに聞こえる。  誰かがいるという安心感が心地いい。  高瀬さんが来てくれて良かった。わたしを連れ帰ってくれて良かった。  高瀬さんが戻って来たら、ちゃんと感謝を伝えなくては。  ううん、それだけではとても足りない。なにかお礼をしたい。これまでの感謝を全て込めて。  そんなことを考えているうちに、結局わたしはソファで眠りに就いていた。  その夜の夢は内容こそ覚えていないけれど、ゆったりと穏やかで良い夢だった気がする。  目覚めの良さと優しい気持ちがそれを物語っていた。  キラキラと輝く朝陽を浴びて、寝転んだまま大きく伸びをする。まだ頭はぼんやりしているが、とにかく気分がいい。  「眠れたか?」  「わぁ!」  突然横から現れた顔に思わず大きな声をあげる。
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