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「わたし部屋に……」
「なんでだよ。紹介するから」
予想外の言葉に顔を上げる。
それは嬉しい。高瀬さんの友人がどんな人か知りたいし、あの砕けた口調の高瀬さんももう少し見たい。
しかし、どんな立場で挨拶をすればいいのか分からない。
やっぱり引っ越し祝いの名目で突然の宅飲みなんて、わたしがいない時にしてほしいのが正直なところだ。
「嫌だ!」
「近所迷惑」
わたしの口を片手で抑えて、高瀬さんが笑う。
「みんな優しくて面白いよ。そんなに緊張しなくていいから」
高瀬さんの友人なら良い人たちだろう。それは分かっているが、せめて心積もりをしたい。
「化粧直してきます」
「そのままでいいよ。可愛い」
可愛い。
何気なく放たれたその一言に胸が騒つく。
耳まで真っ赤になったくせに聞こえなかったふりをして、高瀬さんの横をすり抜けた。
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