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リサは朝の通勤電車で見かける会社員風男性を段々と何となく気になり始めていた。かと言って声をかける勇気もなかったが、平日に休みを取ってしまい、せめて勤務先を知りたくて後をつけてしまっていた。大手企業支社の中へと、その彼は消えた。職場は確認できたが、さてその先はどうしたら良いものかと思案に暮れたが、帰宅時間にまた後を追うしかないと夕方までデパートやネットカフェで暇つぶしをして、その時をただひたすら待っていた。幸い隣ビル一階には喫茶店があり、最寄り駅方向なので、必ず通ると確信し、今日見かけなくてもまたチャンスはやってくると期待し、日も暮れネットカフェから、その喫茶店へと移動した。窓際ソファーをゲットして待ち伏せをしていた。しばらくして運良く彼が前を通り過ぎた。焦ってレジで支払いを済ませ、お釣りも受け取らずにダッシュし、電車の同じ車両に乗り込み、夕方のラッシュ時の雑踏の中で片想いの恋の炎は点火してしまっていた。そして彼が住んでいるらしい駅を降り、商店街通りのファミレスに彼は入って行った。それを確認してからリサもドアを開けたが、彼を待っていたのは何故か彼に似た美し過ぎる妻と子供達だった。その光景が視界に入るや否や心が張り裂けそうな衝撃と嫉妬に狂いそうな自分自身を隠せずにいて、このとき彼を好きで堪らなくなっている事を思い知り、その場でワーッと泣きひれ伏しそうになるのを必死に堪え化粧室へと駆け込み、止められない涙を冷たい水で洗い流し、メイクを直して必死になって何事も無かったかのように席に戻り、注文したアイスカフェラテを一気飲みしてレストランを出てからは、どうやって帰宅したのかも覚えていないほどで、胸の痛みだけを感じながら、また泣き出しては何てバカな事をしたんだろう、ストーカーみたいな事をしてと自己嫌悪に陥り、失意のまま朝を迎えていた。
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