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新しい
家庭作って
レトルトは
いらないからって
オレに寄越すな
普通に読めば独身男の嫉妬か、あるいは結婚する女友達の想いを諦める男が詠んだ短歌になるだろう。
しかしここにBL短歌という前提がつくと、この短歌はより奥行きを持って響いてくる。
告白もできない恋。
結婚する想い人。
想い人は詠み人の恋心を慮ることなく、買い置きのレトルト食品を渡す。
受け取った詠み人の切なさは察するに有り余る。
想い人の伴侶への嫉妬。幸せを手に入れた想い人そのものへの嫉妬。そしてそれを言うことすらできない自分への苛立ち。
BL短歌は美しさや儚さを表した作品が多い。しかし平易な言葉でも、BLというジャンルのテーマの一つである「恋の切なさ」を感じさせることはできる。
……やはりあの時、買い置きのレトルト食品など譲るべきではなかった。
気持ちを試すようなことをして嫉妬させて、追い詰めて、結局疎遠になったかつての友人を、今オレは思い返すことしかできない。
《END》
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