序章

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そんな私の疑問に答えるかのように、 男性キャスターは続けた。 「自殺した男性の妻によると、 男性は会社側から1日17時間以上の過酷な勤務を要求され、 休日出勤を強要され、2週間以上休みを取らせてもらえず、 更には残業代や休日手当も支給されないという過酷な状況の中、 上司から高すぎるノルマを設定され、 達成できなければひどい暴力や大勢の前で罵声を浴びせられたという話を………」 「は?コイツ、バカじゃねぇの?」 父親が、座ってたソファから立ち上がってリモコンのボタンを押してテレビの電源を切った。 まだ観ていたのに……… 何も映さなくなった真っ暗なテレビ画面と、 勝手にテレビの電源を消した身勝手な父親を非難の目で見る。 「どうせまた、マスコミが面白可笑しく報道してるんだよ。 その方が、数字(視聴率)取れるしな。 もし事実なら、辛いのに辞めずにいたこのオッさんがバカなだけ。 こんなバカのために迷惑被った中央線の人たちが可哀想」 父親は皮肉交じりに言うと、 グラスに入っていたウィスキーの氷割りを一気に飲み干し、 台所に行って、グラスを洗って食器カゴに伏せて、自室へと向かって行った。 何もそこまで言わなくてもいいじゃん。 と、父親の発言に納得しないながらも、 私もリビングの明かりを落とし、 自分の部屋に向かった。
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