夜会にて囚われる乙女

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 領民による暴動は囮であり、レトレン領主が反乱を企てていることを知ったのは、特別部隊が出立してから九日目のことだった。  諜報機関の『名もなき者』が怪我をおして走り続ける特務騎士を保護したのだ。  その騎士によると、レトレン領主とその私兵により特別部隊を率いていたユースタス特務長及び半数以上の騎士が捕らえられているという。伝令を出したのは難を逃れたシュイリュシュカであり、百二十名で構成された特別部隊のうち四十七名で交戦している状況で至急救援をとのことだった。  すぐさま救援部隊が編成されたが、どんなに早くともレトレン領までは四日かかる。  そこでアストラードは先行して精鋭五十名だけを率いて夜間行軍を行うと進言した。暗愚なユースタスを救いに行くわけではなく、必死に戦い続けているだろう騎士たちのために。アストラードを信じ、諦めずに戦っているシュイリュシュカを迎えに行くために。  結果、反乱から四日目の深夜過ぎにはレトレン領に入り、早朝を狙って奇襲をかけることができた。  シュイリュシュカたちは街の大聖堂に結界を張って逃げ遅れた領民たちを護るように籠城しているようで、周りを取り囲む私兵もおいそれとは手が出せないらしい。それを見たアストラードは部隊を二つに分け、一方を大聖堂へと向かわせる。  あの結界なら多少のことでは破られまい。  だから、アストラードたちの部隊がレトレン領主を拘束して人質となっていたらしいユースタスを保護していたころ、まさかシュイリュシュカがあんなことになっていようとは思いもしなかった。  結局顔を見る間も無く、重傷患者として衛生部隊に引き渡されたシュイリュシュカはそのまま他の怪我人と共にすぐさま医療テントに連れていかれ応急手当を受けた後、近くの街の医術院に移り、さらには首都で大規模手術を受けることになっていたのだ。さらには多量の出血と魔導力の枯渇によりずっと意識がなく、そのまま生家のあるルドニコフ領の医術院に入院していると聞いたのは反乱を鎮圧してから二週間後のことだった。  残党狩りと面倒な事後処理の合間に病院を巡るも行き違いばかりて一向に会うことができず、ぐずぐずしている間にまんまとルドニコフ子爵に介入されてしまったアストラードは、その鬱憤をユースタス特務長にぶつけた。
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