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そう言われ、私は彼女に手を引かれるままコーヒーショップを後にした。
彼女の住む部屋はお世辞にも綺麗とは言えなかった。乱雑に積まれた外国語のペーパーバックに、ベッドのシーツには皺が寄っていた。彼女の部屋からは甘くてどこかベリーの香りがした。
「すみません、汚くて」
いまシャワーの準備をしますから、と言う彼女を急かすのもはばかれた。私は渡されたタオルで髪の毛を拭いて、なるべく部屋のなかを見回すのをやめた。
「タオルはこれを使ってください。あと私の部屋着ですが、お洋服が乾くまで我慢して頂けますか?」
「ありがとうございます。助かります」
私は彼女からタオルとスウェットを受け取って、私は浴室へと向かった。水回りは綺麗にしているなあと感心して、私はシャワーのコックを捻った。スーツを着ていたおかげか、下着はかろうじて濡れていなかったのが幸いだった。
「シャワー、ありがとうございました」
私はタオルで髪の毛の水分を取りながら、彼女のいる部屋に顔を出した。
「なにかご不便ありませんでしたか?」
「いえ、大丈夫です」
「スーツの方はクリーニングに出させて頂きます。いまシャツの方を洗って脱水をかけているので、もう少しお待ちください」
彼女はそう言って、私に冷たいお茶を出してきた。
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