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琴音のコトバ。
「ね、夕飯なにがいい?」
「今日は鶏がいいな。」
毎日穏やかに聞いてくれる彼女に俺が出会ったのは、もう5年も前のことになる。自分の体以外なにも持っていない俺は、そのとき人生の中できっとどん底にいたのだろうけど、その後彼女に拾われたことで、そのつらさもすべて報われた気がした。
「鶏さん好きだよね~。」
「琴音(ことね)のくれるものは何でも好きだよ。」
俺が彼女のことを大好きなせいなのか、本当にご飯がおいしいおかげなのか、俺にはよく分からないし、どうだっていい。むしろ琴音がいれば、家がなくてもご飯を食べられなくても生きていける気がした。
ま、そんなこと言うと琴音が怒りそうだから、それは黙っているけど。
「あのね、今日部長がさ・・・。」
そうやって琴音が俺にたくさんの愛情をくれるかわりに、俺は毎日琴音の話をじっくり聞く。時々相槌を打つけど、琴音はそんなものはきっと必要としていない。女子はだいたいストレスのはけ口がほしいだけだと、いつかテレビで見たことがあるから、できる限り黙って話を聞くことにしている。
「ほんとにやだ~。会いたくない~。」
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