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オレンジに染まった夏のN市。
S駅近くのファミレスで、中高生達が益体の無いお喋りに花を咲かせている。
彼、あるいは彼女達のグループ内で、こんな噂が囁かれていた。
「ねぇねぇ知ってる?K駅にある女子トイレの話」
「聞いた事なーい」
「昔ね、その駅の女子トイレで、赤ちゃんの死体が見つかったんだって」
「えー、怖ー!ひょっとして堕ろしたの?」
語り部が得意げな笑みを浮かべる。
「知らないよー!それでそれで、その赤ちゃんの霊がその個室に残ってて、使った人の家までついていくんだってー!」
「やだー!私、そういう話苦手なんだってー!言ってるじゃーん!」
「ゴメンゴメン、でも死体が見つかったのはマジ話だって、アヤちゃんが」
聞きなれない名前に、聴衆の一人が思わず尋ねる。
「誰だよ、アヤちゃんて」
「ウチのおかーさん」
「おふくろ名前呼びとか、ヤベーな!」
若者達は元気に笑い合う。
これから語られる話に、彼らは指をかけることすらない。
大部分の人々は、当たり前の日々を過ごしていく…。
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