瀬谷雄大

11/17
前へ
/100ページ
次へ
渋谷駅の裏通りに闇は広がる。多摩川河川敷とはまったく別世界で、そこまでの道程の不気味さから引き返す会員も多い。 そこから「アンフェール」 地獄と名付けられた。そこに子猫のように背中を丸めて怯えている村瀬が入ろうとしている。 その背中を瀬谷はただ見ていた。ドアを開けるとミュージックと一緒に躍り狂う大人たちの波。荒れ狂う波に飲まれ、苦しみながら和馬の背中を追いかけていく。瀬谷は村瀬が立ち止まらないように背中を押す。 そのとき、一度だけ村瀬が横を振り向いた。人の波から視線を感じ取ったらしい。 波の隙間から微笑みかける悪魔が笑っている。瀬谷を見つけるといっそうに笑みを深めていく。 三田地ハル。 今日も薬を売る“スプリング“のひとり。相棒の春 奈央子とはそりがあわない。このふたりを組み合わせたこと、薬を売らせていることも瀬谷の仕業だ。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加