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…瀬谷雄大は悲劇の青年だ。
これは多く報道されているが、彼の透き通った顔を見てしまうと寂しさすら見えない。
取調室でもっとも協力的だった瀬谷は順調に進んでいたが、やはり冴島の名前で言葉を呑んだ。
「冴島が見つかってない」
刑事からその言葉を聞くと、瀬谷は口をぽかんと開けたまま刑事の目を見ていた。
「冴島を知ってる?」
「よく知ってるよ。たまに出て来て、たまに居なくなる。そんな奴だ。」
刑事は瀬谷の言葉を咀嚼してから飲み込む。
「…でも冴島は捕まらないよ。」
「どうして?」
「もうここにいないから。」
「逃げてるってことか?」
「…逃げたんじゃない。村瀬を…いらなくなって捨てたんだ。」
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