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ちょうど、その時だった。
店の扉が開く音に気づいて振り向くと、由奈が立っていた。自然と村瀬は椅子から腰をあげて、由奈と二人きりの世界に迷いこんだようだった。
「由奈ちゃん………」
由奈は掻き分けるように踊場を抜けていくと、まっすぐに村瀬の目の前にきた。
「…久しぶり」
「なに言ってんの。いつも、一緒にいたでしょ」
そう言って村瀬のポケットに指をいれた。そこには岸戸を殺害したあとに由奈がこっそり忍ばせたナイフが息を潜めていた。
すっかり忘れていた。
村瀬は我に返ったようにナイフに触れると溜まっていた息を吐き出した。
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