隠した刃

4/15
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
瀬谷は由奈をじっと見ている。その光景を不思議そうに村瀬も見ていた。 「そっか、初対面だよね。ネットで話しただけでしょ」 和馬が少し気を利かせて割り出すと瀬谷がくぐもった声で「ああ」と言った。不思議なことに、言葉を交わさなくてもこの二人が対立している雰囲気がある。その雰囲気がここに生きて、呼吸をしている。 「初めまして。」 由奈から小さく頭を下げると瀬谷は無愛想に頷くだけだった。 「村瀬を置いて、どこに?」 瀬谷が聞くと由奈の目が光った。 「前に話したとおり」 「村瀬に言わないのか?」 「話したところで……」 由奈はちらりと村瀬の不安そうな顔を見た。 「なに?なんの話?」 和馬も知らない様子で身を乗り出す。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!