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「知らない」
全身の肌が尖って、冷たい空気を裂くように震動が走る。和馬の青白い顔がやけに不気味に浮き立ち、村瀬は汗をかいていた。
見切りをつけたように和馬は話題をかえ、その夜は何もなく過ぎていった。
「瀬谷って優しい人だよね」
ぼそりと布団のなかで村瀬がつぶやくと、和馬は唸るように考える。
「そうね~。」
気の抜けたような返事に村瀬は振り向いた。和馬はこちらとは逆を向いて、横になっている。
「いい意味でも、悪い意味でも。」
「なにそれ」
「もうすぐわかるよ。瀬谷ちゃんがそれを実行するころには…ね」
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