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村瀬のなかで違和感が芽生えていたが、それが今はっきりと何なのか諭された。
どうしようもなく苦しいところから抜け出すために犯した罪が誰かに罰せられていいものなのか。
瀬谷がそうだ。
彼はあの河川敷でずっと戦っていたのだ。
「瀬谷を………匿う」
「は?」
和馬は村瀬の心境の変化に目を丸くした。
「どうしたの?いつもの正義感はどこにいったの?」
「…………だって………瀬谷は…」
込み上げてくる悪意を口にしてはいけない。そう思って、咄嗟に口を抑えた。和馬は俯いた村瀬の頬に手を当てる。
「許してあげてね……瀬谷ちゃんを」
その言葉が琴線に触れた。なにかの間接が外れたような、均衡が崩れたような、脆い音を立てていた。
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