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翌朝、
早朝、眠い目をこすりながら五時半に起床した。
重い足取りでカーテンを開くと、窓の外は、昨日を引きずったあいにくの雨模様だった。
夕べより雨足も強まり、強風に流されて雨は激しく窓を打ち付けていた。
「ああぁ……」
思わず嘆きがこぼれだす。
小さなため息をつきながら、気を取り直すように浴室に向かった。
シャワーを浴びるとスッキリして目も覚め、メイクと着替えを済ませると、朝食のために部屋を出た。
バイキング形式の朝食で、プレートに好きな料理を控えめに乗せて席に着くと、食事に手を着ける前にスマホを手にした。
『夕べはごめん。疲れちゃっててベッドに横になったらそのまま寝落ち(;'∀')。帰ったらまたゆっくり話そ。お土産買って帰るから('ω')ノ』
薫の方はちゃんと帰れただろうか。
帰れてないなんて困るし、そんなことになっているとは思いたくない。
そんなはずない……。
あり得ないことをあえて聞くのも可笑しな話だ。
私はそのことには触れずにメールを送信した。
メールはすぐには既読にならなかったが、薫のことだから朝はきっと余裕もないだろう。
私はスマホを伏せて朝食を食べ始めた。
食後のコーヒーを飲むと、佐久間くんとの朝食を思い出す。
朝からコーヒーを飲む習慣がないので思い出してしまったのかもしれない。
佐久間くんと一夜を過ごした日……。
それを頭の中で回想していると、急に不安が増してきた。
薫があの時の私のように佐久間くんと一緒に朝食を共にしている映像が脳裏をよぎった。
「……ない、ない」
薫には彼氏がいるし。
私は一人首を振りながらコーヒーカップに口をつけた。
ホテルのコーヒー。
味は悪くないはずなのに、強い苦みだけが喉に絡みつくように落ちていった。
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