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「……生き返ったぁ」
私は目を閉じたまま顔を天井に向け、
モカの香りが残る息を鼻から大きく吐き出した。
一口飲んだカフェモカが
喉を落ちて私の身体を内側からじわりと温めた。
甘みが苦みを引き立たせ、
その逆もしかり。
口の中で後を引く苦みを楽しみながら、
チョコレートソースとミルクの甘さが恋しくなって
再びカップを口に運んだ。
「幸せ……」
無意識にこぼれる言葉に再びため息が混じった。
「奈緒さんは大袈裟ですね」
カウンターの中のマスターが表情をほとんど変えずに小さな笑いの混じった息を鼻からもらした。
「大人になったらね、こういうことにも幸せを見いだせるのよ」
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