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私はそこまで言ってハッとした。
「あ、もしかして、こんなことにしか幸せを見いだせない寂しい女とか思ってるんじゃないでしょうね?」
「そんな風に思ってないですよ」
「どうだか。佐久間君、何考えてるかわからないから」
私がふざけて睨むように彼を見ると、
彼は私の視線など軽く受け流し、
洗浄した食器を棚に戻すためにくるりと背を向けた。
麻の白いシャツの皺がふわりと柔らかかった。
腕まくりにした白シャツにネイビーのエプロンが彼の定番で、
それが彼によく似合っていた。
私が彼を〝佐久間君〟と呼び、
彼が私を〝奈緒さん〟と呼ぶのは、
私がここ、喫茶店『珈琲屋』の常連だからに他ならない。
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