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心臓が焦りだす。
目が泳ぐのはなぜだろう。
仕上げのチークは乗せていないのに、
鏡をのぞく私の頬は薄く色づいていた。
鼓動の速さは後ろめたさだろうか。
「奈緒?」
薫がひょいと顔を出す。
鼓動を速めた心臓は過剰な反応で胸元から飛び出しそうになる。
「え!?」
「何そんなに驚いてるのよ? 準備できた?」
「あ、あ、うん。もうすぐ」
私は慌ててチークブラシを手にして返事をすると、薫から顔をそむけながら急いで支度を整えた。
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