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顔が全てだとは言ってない
高校二年生の秋、俺は悪魔に出会った。
最愛の妹をたぶらかし、俺の貞操を奪い、常に冷笑的で、他人を見下している。見た目も頭も家柄もよく、スポーツも万能だが、性格だけが破滅的に悪い男。その名を、久我正行と言う。
やつは、愛ってなんだと俺に尋ねた。俺だってそんなことは知らない。久我と出会って長いことたつ、今だってわからない。だから俺は今でも久我に、愛してるって言ってない。もしかしたら、一生言わないかもしれない。それでも俺は多分ずっと、久我と一緒にいる。
まずは悪魔に遭遇する前の、平和な日常から話そう。季節は11月初め。俺がまだ、何も知らなかったころの話。
★
街路樹の枯れ葉が、歩道の上を舞っている。それを見ながら、俺はくあ、と欠伸をした。
食欲の秋というが、今は眠気がまさっている。成長期だからこんなに眠いのだろうか。だったらうれしいけど。そんなことを思っていたら、後ろ頭にちょん、と指の感触がした。
振り返ると、モデルみたいな佇まいの男が微笑んでいた。
「#恵__めぐみ__#」
「寝ぐせひどいよ、ヒロ」
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