顔が全てだとは言ってない

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 濃いブラウンに染めた髪は、端正な顔立ちによく似合っている。少し長い髪を縛り、垂らしているのだが、不思議と軟派な感じはしない。この男前は、俺の親友の高野恵である。  俺と並んで歩きながら、恵は言う。 「もう高校生なんだから、髪くらいといたら?」  恵の姿に、通りすがりの女子高生が見惚れている。俺は肩をすくめた。 「いーんだよ、恵と違ってイケメンでもないし」  別にひがんでいるわけではない。男は顔ではなく、心意気で評価されるべきだからだ。 「そんなんじゃ、さくらちゃんに嫌われるよ。行きつけの美容院、紹介するけど」  俺はけっ、と吐き捨てた。 「男は床屋だ。美容院なんてチャラチャラしたとこ行けるかよ」 「……何時代の価値観?」  古風と言え、古風と。 「それに、さくらは男を見た目で判断したりしないんだ」 「さくらちゃん、今いくつ?」 「十四歳」 「だったら、もう好きな男の子の一人や二人いるんじゃない?」 「いない」  俺がきっぱり言い切ると、恵が疑わし気な顔をした。 「ほんとに?」 「さくらは年上が好きなんだ。ドラマとか見てても、三十代の俳優とかをカッコ良いって言ってる。部活が終わるとすぐ帰ってくるし、同級生の男を連れてきたこともない」 「……ヒロが、追い返してるんじゃなくて?」 「してない」 「もしさくらちゃんが、男の子を連れてきたら?」     
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