顔が全てだとは言ってない

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「まず、さくらを一生かけて守る気があるのかどうか尋問する」  恵がため息をついて、俺の肩に手を置いた。俺はきょとんとした。 「なんだよ」 「それ、マジで嫌われるからやめたほうがいい。っていうか、ヒロ、お父さんみたい……」 「俺は兄であり、父親代わりなんだから、心配するのは当然だろ」 「行き過ぎ。多感な時期なんだから、恋くらい自由にさせるべき」 「さくらが恋してる? あり得ない。もしそうなら俺は必ず気づく。さくらを誰よりも愛してるからな!」  恵は俺を胡乱な目で見て、「駄目だ、このシスコン」と言った。 ☆  俺の父親は、俺が五歳の時に亡くなった。その時さくらはたった三歳。それから十一年、母親は女手ひとつで俺たちを育ててくれた。片親にも関わらず、俺たちは心身ともに健康に育ってきた。  特にさくらは優しくて可愛くて、天使のような女の子に育った。  しかし、最近、俺にはひとつ懸念がある。さくらは名前の通り、花のように愛らしい。変な虫がつかないか心配なのだ。 「ただいまー」 「#橘__たちばな__#」という表札のかかった門を抜け、声を上げながら靴を脱ぐ。母は働いているので日中不在だが、さくらはテスト週間中なのでいるはずだ。案の定、玄関には中学指定の革靴がある。     
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