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そんなの詭弁だ。そう言いたいが、どう反論していいかわからなかった。久我が隣に座ってきて、囁く。
「うーうー言ってないで答えろよ、シスコン」
「わかんないけど」
「わかんない? 愛とやらを教えるんだろ、俺に」
「理屈じゃないんだ。心が、通いあうとか、この人を大事にしたいとか、そういうこと」
久我は鉛を飲み込んだみたいな顔をする。
「は?」
「だから、こう、抱きしめられたら、なんか心が暖かくなるだろ」
俺はそう言って、久我に抱きついた。酒の匂いと、香水なのか、甘い、いい匂いがした。そういえば、キスされた時も、この匂いがしたな。
「……」
久我は黙り込んでいる。
「ならない?」
「まったく」
「この悪魔め、血が紫色なんじゃないか……?」
俺が離れようとしたら、久我がぐっと背中に手をまわす。
そのまま、身体をソファに倒された。
「え、な、んだよ」
「おまえが抱きついてきたんだろ」
久我の指が、俺の耳たぶに触れた。なんだ、と思った隙に、そのまま頭を固定されて、唇を奪われる。余りに鮮やかな手際で、俺は唇を塞がれてから、遅い抵抗を試みる。
「むー!」
必死にもがくが、無駄な抵抗だった。
なぜだろう、頭と肩を固定されているだけで全く動けない。
というか、なぜこいつは平気で男にキスができるんだ。恵の言う通りバイなのか。
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