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山下署から出た二人は、車に戻ることにした。
マキ達は署の前を歩き出し、1ブロック離れたコインパーキングに向かった。
涼夏「どう思う?」
マキ「水上の勘はともかく、引っかかることは多いね。」
涼夏「例えば?」
マキ「目撃者の証言、全身黒づくめの男、とか。」
涼夏「やっぱりそこか・・・・」
マキ「的場町、行くか。」
車に辿り着いたマキは駐車場の清算を済ませ、涼夏はエンジンを吹かし始めた。
助手席に座ったマキの目の前に、涼夏は一枚の紙を差し出した。
マキ「・・・・やるじゃん。」
涼夏がニヤリと笑う。
涼夏が差し出した紙には、水上の調書で書かれていた目撃者の情報が載っていた。
涼夏「行きましょ。」
マキ「まずは・・・・この人だな。」
涼夏「住所は?」
マキ「的場町の・・・ここ。」
マキは紙を指差し、ハンドルを握る涼夏に見せた。
涼夏「了解。」
涼夏はアクセルを踏み込み、的場町に向かって走り出した。
的場町の大部分は住宅地で占められていた。
表通りには商店が並ぶが、一歩、裏通りに入るとアパートや一戸建ての住居が軒を連ねる。
マキと涼夏はその一画にある、庭付きの洋風の一軒家に足を踏み入れた。
表札には(近藤)と書かれている。
マキ「まずは・・・この家か。」
涼夏「証言をしたのは近藤恵子(こんどう けいこ)さん、主婦だってさ、」
マキ「ふーん、協力してくれればいいけどな・・・」
マキはインターホンを鳴らし、しばらくするとインターホンから女性の明るい声が返ってきた。
[はーい・・・]
マキ「すみません、私、個人向けの調査会社を営んでいる物でして・・・」
事情を説明し、家に上げてもらったマキと涼夏は居間に通された。
マキは近藤にお願いをし、同じく証言をした人間を呼んでもらうことにした。
しばらくすると、近藤の知り合いである横田弘美(よこた ひろみ)が姿を現し、マキは二人の話を聞くことになった。
近藤は50代半ばの少し太めの女性で、家の中にいたにもかかわらず、まるで外出するかのような服装でマキ達を迎え入れた。
横田も50代、近藤とは違い、細身の体で、常にニコニコしているような笑顔でいる印象だ。
マキ「・・・というわけで、警察に証言したお二人にお話を聞こうかと思いまして、」
近藤「そうですか、私達でできることがあれば・・・」
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