青の街

17/31
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
宇部「長田さん?何回かうちに買い物に来てますよ。」 涼夏「どんな様子でした?」 宇部「どんなって、こっちが愛想よくしてるのに、目も合わしゃしない。」 マキと涼夏は顔を見合わせた。 入口から引き戸が開く音が聞こえた。 宇部「どうも、いらっしゃい。」 マキが振り返ると、小さな女の子を連れた母親が、小さく会釈をして宇部の横に歩いてきていた。 宇部「今日は、何か?」 「主人の上司のご挨拶に、詰め合わせを探しているんですけど・・・・」 宇部「そうね・・・・このあられの詰め合わせはどうかしら?甘いのも入ってるし、長く売れてますよ。」 「じゃあ、それ一つお願いします。」 宇部は裏のカウンターから長方形の箱を取り出した。 宇部「それで、お包み用の紙なんですけど、三種類御用意しております。」 宇部は3枚の紙片が貼られている台紙を取り出した。 宇部「多少、お値段が変わるんですが、赤、緑、青があります・・・・」 「一番いいのはどれです?」 宇部「こちらの、青の和紙タイプになりますね、目上の方にお渡しするのに重宝されてますよ。」 「じゃあ、青の包装で。」 宇部「ありがとうございます。」 宇部は一礼し、商品の包装を始めた。 マキ「宇部さん、ありがとうございました。」 マキは宇部に会釈をして、和菓子店を後にした。 マキは店を出た瞬間、屋根に掲げてある看板を見上げた。 マキ「創業、120年か・・・・」 涼夏「老舗だね。」 マキはそのまま移動し、『向井精肉店』の間に立った。 マキ「ここは・・・90年だ・・・」 涼夏「ねえ、マキさん、どうする?」 マキ「とりあえず、一回戻るか。」 涼夏「え?長田すみれに会わないの?」 マキ「うん、玲奈に調べてほしいことがあるから・・・」 マキ達が戻った事務所の机には、コンロと鍋が置かれていた。 鍋にはすき焼きの具材が敷き詰められ、机の周りにはマキ、涼夏、玲奈の三人が鍋に向かって箸を伸ばしていた。 玲奈「それで、何かわかったの?涼夏ちゃん、肉。」 涼夏「へい。」 涼夏は『向井精肉店』で購入した肩ロースを、丁寧に一枚ずつ鍋に入れていった。 マキ「うん、調書の目撃者を訪ねたんだけど、答えは皆同じ、涼夏、肉。」 涼夏「へい。」 玲奈「身長の高い黒い男ね、涼夏ちゃん肉。」 涼夏「へい。」 マキ「それと、長田すみれの印象、最悪だね・・・涼夏、肉。」 涼夏「へい。」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!