1人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
※この物語はフィクションです。実際に存在する店舗、施設は物語とは関係ありません。
季節は10月だというのに、照りつけるような日射と、その日差しを受けて吹きつける風は蒸し暑ささえ感じた。
横浜駅から程近い大通り、様々な作業車が路肩に停車し、運転手は車内で昼の休憩を取っている。
その一台の中に、古ぼけた車が止まっていた。
車はホンダN360(黒)
車内には二人の女が座っている。
助手席にいる女はパーマのかかったショートヘア、年齢は35歳、名前はマキ。
運転席の女は、黒髪のロングを、後ろに束ねた21歳、名前は涼夏(りょうか)。
車の横は建物が並び、マキはその中にあるラブホテルの入口に釘付けになっていた。
涼夏はシートを倒し、ひたすら天井を見つめている。
車のラジオからFMの交通情報の音楽が流れる、時刻は12時をとうに越していた。
涼夏「ねえ、もう昼だよ・・・」
マキ「・・・・・」
涼夏「腹減った・・・・」
マキ「・・・・・」
マキはひたすら、ホテルの入口を見つめている。
涼夏「『本丸亭』の塩ラーメン食べたい。」
マキ「まだだよ。」
涼夏「『角平』のつけ天食べたい。」
マキ「男がまだ出てきてないでしょ?」
涼夏「『センターグリル』の浜ランチ食べたい・・・・」
マキ「出てくる写真取ったら、報酬もらえるから、そしたらあんたも・・・・浜ランチ?」
涼夏はシートを起こし、マキを見つめ大きく頷いた。
マキ「・・・・・カリカリのチキンカツ。」
涼夏「ふわっふわのオムライス!」
マキ「特製ソース・・・」
涼夏「¥200アップでチキンライス!」
マキ「・・・・変えちゃう?」
涼夏「変えちゃう、変えちゃう!」
マキ「・・・・・行くか。」
涼夏「イエーッス!!」
涼夏は即座にシートベルトをセットし、エンジンをかけ始めた。
マキ「ったく、せっかくのチャンスだったのに・・・」
涼夏「腹が減っては、戦はできネ、チャンスだけに、またのご機会に・・・・」
エンジン音が唸りを上げ、涼夏は窓越しで車をけん制し、ハンドルをめいっぱい回した。
車は家々が密集した山間を走り抜け、やがて帷子川を渡り、横浜駅のはずれを通り過ぎていく。
桜木町の飲み屋街、野毛。この街の端に洋食屋の『センターグリル』は営業している。
扉を開けて、右側に二階に続く階段があり、上に上がると、目の前にはキッチンを兼ねた会計場所がある。
最初のコメントを投稿しよう!