青の街

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事務所の前の通りでは、一人の女が佇んでいた。 ・・・・もう、戻ってるかしら。 女は、事務所に続く階段を見つめていたが、足を進めることに戸惑っていた。 その時、上から隆司と玲奈が笑い声を上げながら降りてきた。 隆司「お、さっきの?」 女は隆司に向かって小さくお辞儀をした。 玲奈「もう、帰ってきてますよ!」 隆司「上がんなよ、待ってるよ。」 女「は、はあ・・・・・」 二人はそう言い残し、隆司の店に向かって歩き始めた。 隆司「んでな、全部の数字が揃うと『嵐』っていってな・・・」 玲奈「へえ、他には何が・・・」 二人を見届けた女は、表情を歪ませた。 ・・・・やめようかしら・・・ 女が立ち去ろうとしたとき、頭上から叫び声が聞こえてきた。 マキ「ストップ!そのまま!」 女が見上げると、事務所の窓からマキが頭を出して女を見ていた。 マキ「さっき来てましたよね!どうぞ。」 女はマキに向かってお辞儀をして、事務所への階段を上がっていった。 事務所内、ソファーに座った女は、涼夏からお茶を受けていた。 マキは女の反対のイスに座り、涼夏も続いて隣に座った。 マキ「それで、お名前伺ってもよろしいですか?」 利恵「はい、太田利恵(としえ)と申します。」 マキ「太田さん、それで、ご用件は・・・」 涼夏「浮気ですか!」 利恵「違います、実は、夫の太田秀治(ひではる)について調べてもらいたいんです。」 涼夏「なるほど、秀治さんの、不倫調査ですね!」 マキ「だから違うっていってんじゃん!すみません、この子、ちょっと至らなくて・・・・」 涼夏「いいんですよ、私達は、あなたの味方ですから、本当のこと言いましょう、秘密は守ります!」 マキ「ちょっと、黙っててくれる?」 利恵「夫は・・・・殺されたんです。」 マキと涼夏は口を閉ざし、利恵を見つめた。 涼夏「殺された・・・?」 マキ「どういうことでしょうか?」 利恵「一ヶ月前、南区の的場町で事件があったのをご存知ですか?」 マキ「ああ、確か殺人事件がありましたよね・・・」 涼夏「中年男性が刺殺されたってやつ・・・」 利恵「あの事件、被害者は私の夫です。」 マキ「そうでしたか、それは残念なことで・・・」 マキは利恵に向かって、深々とお辞儀をした。 涼夏も真似るように、ぎこちなく頭を下げた。 マキ「それで、その事件に関して、何か調べてもらいたいと・・・」
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