1人が本棚に入れています
本棚に追加
利恵「はい、その事件の犯人を捕まえてほしいんです。」
マキと涼夏は顔を見合わせた。
マキ「でもあの事件は、警察が捜査中でしょ?」
涼夏「うん、ニュースで確か通り魔の犯行って言ってたような・・・」
利恵「違います、私、犯人を知ってるんです。絶対にあの女です!」
マキ「女って、どなた?」
利恵「長田すみれという女です。」
涼夏「ナガタスミレ・・・」
利恵「はい、うちの近所に住む、子連れバツイチ女です。」
マキは利恵の顔色を伺った。
利恵の目は、下を向きながらも左右に動いている。
何を、そんなに焦っているのだろう・・・
マキ「あの、何で、その長田さんが旦那さんを殺したと?」
利恵「夫は、あの女に言い寄られてたんです。」
涼夏「言い寄られてた?」
利恵「はい、私見たんです。」
マキ「どこで、何を?」
利恵の話によると、秀治は生前、町内会の会合によく参加していたそうだ。その時に一緒に参加していた長田と知り合い、意気投合していたという。
涼夏「意気投合だったら、殺す理由は無いと思うんですけど?」
利恵「私も、最初は夫の相手をしてくれる、やさしい方だな、と思っていました。けど・・・」
マキ「けど?」
利恵「私が、町内の懇親会に夫と参加したときのことです。」
涼夏「ふんふん・・・」
利恵「夫もお酒が入って酔いが回ってきたところ、長田さんが夫にお酌をしに来ました。」
その時、利恵は秀治から離れたところで、婦人仲間と会話をしていた。
利恵は秀治を気遣い、何度か秀治の席を見ていたところ、隣に長田が席に着き、密接していたことに気づいた。
お互いに肩を寄せ合い、長田が秀治に対して耳打ちしながら会話が弾む姿を見て、利恵は、長田の秀治に対する好意を確信したという。
マキ「いや、それだけで、何で殺す動機になるのか、ちょっと・・・・」
利恵「わかってます、この話だけじゃ、単なる嫉妬にしか見えないでしょ・・・」
涼夏「なんだ、なら話が早い・・・」
マキ「シッ!・・・・続きがあるんですか?」
利恵「夫は、今年で65歳です、長田さんは39歳、どう見てもつり合いません。」
涼夏「つまり、長田さんが好意を寄せる理由が他にあるってこと?」
利恵「夫は今年、定年退職しました。そこそこ有名な企業だったので、退職金もそれなりに・・・」
マキ「なるほど、長田さんが旦那さんに近づいた理由は、その退職金にあると・・・・」
最初のコメントを投稿しよう!