【第三章:風の狩場とカルマの谷 十四】

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「清濾過丸はねぇ、まぁお腹の薬と言っても良いんだけど、あれだね。トイレのあれなんだよね」  ギンコがさらに苦笑しながら答える。 「これはボクらマレビトだけじゃなく、狩りの時にはネコタミみんなも飲むんだけどね。  身体の中の老廃物を濾過して、小さくまとめて出す薬なんだ。  山の中だと、トイレがないでしょ。  でも、野生動物って匂いに敏感だから、それで気がつかれちゃう事もあるわけ。  だから、大の方をね、  このくらいの真っ黒い綺麗なビー玉みたいに固めちゃうの。  これは埋めておけばすぐに土と水に分解されるから、自然にも優しくて、匂いもしなくて一石二鳥なんだよ」  ギンコは人差し指と親指で輪っかを作って微笑んだ。 「あ、でも、水が流れる場所とかの近くに埋めちゃダメだよ。  それがボクらの飲み水になるんだからね」  スズは口を開けたまま絶句した。  フーカの方を見る勇気はなかった。 「ちなみに、日本で有名なお腹に効く丸くて苦いあのお薬は、ペットの猫とか犬にとっては致命的な毒になるから絶対にあげちゃダメだよ。  あ、マレビト用の風邪薬とかもね、動物やネコタミにとっては危険な物があるから、それは覚えておいて。  まあ、もし持ってても最初の持ち物検査で取り上げられるけど。  逆に、毒蛇なんかに噛まれた時に、ボクらには血清が必要になるけど、彼らには必要ない事もある。  外見では解らないけど、ボクらとは体の中のシステムが違うから、そういう所は本当に気をつけようね」  スズは「知らなかった」という顔で頷いた。  その後、ウルルから荷物のチェックを受け、二時間ほど岩イノシシの生態などについて学習したあと、この日の全ての授業は終了した。  岩イノシシ狩りの本番の知らせが入ったのは、この二日後の事だった。
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